就職活動をしていたころ、私は「顔採用」という言葉を初めて聞いた。笑い話のように語られていたけれど、その言葉はずっと頭の片隅に残り続けた。
大手企業に入社し、インターナショナルな接客の現場に立つようになってから、その感覚はより具体的なものになった。空港のラウンジ、ホテルのフロント、VIPゲストとの対話——そういった場所では、見た目の印象が、言葉よりも先に相手に届く。それは否定すべきことではなく、接客のプロとして向き合うべき現実だった。
「整えてきたね」の一言が、すべてを変えた
あるとき、先輩から「最近、顔が整ってきたね」と言われた。褒め言葉のつもりだったのだと思う。でも私は、その瞬間から「整っている」とはどういうことなのか、考えずにいられなくなった。
整っている、とは何か。美しい、とは何か。その基準は誰が決めるのか。
接客のプロの世界では、印象管理は技術として教えられる。姿勢、表情、声のトーン、服装——すべてに理由があり、すべてに改善の余地がある。なのに「顔」だけは、なぜか「生まれつき」と「運」で片付けられてしまう。その違和感は、長く現場に立てば立つほど大きくなっていった。メイクを変えると「なんか今日いい感じ」と言われる。髪型を変えると「雰囲気変わったね」と言われる。でも、何がどう変わったのかを言語化できる人はほとんどいなかった。感覚で語られ、感覚で評価される。そのことが、ずっともどかしかった。
育休という、立ち止まる時間
長女が生まれたとき、私はビジネスの現場から離れた。慌ただしかった毎日が、急に静かになった。育児は想像以上に体力を使うものだったけれど、それと同時に、ゆっくり考える時間が生まれた。
次女が生まれてからの数年間、私は二人の娘を育てながら、自分が何をしたいのかをずっと考えていた。現場に戻りたいという気持ちはあった。でも同時に、あの「もどかしさ」を何かの形にしたいという気持ちも、消えずにあった。
娘たちが少しずつ大きくなるにつれて、私はその思いを言葉にできるようになってきた。就活、職場、結婚、育児——女性は人生のさまざまな場面で、他者からの評価に晒される。そのたびに「運がよかった」「感じがよかった」という曖昧な言葉で片付けられてきた何かを、もっと明確にしたいと思った。
「運」を、意思決定に変えたい
顔の印象は、変えられる。これは接客の現場で身をもって知ったことだ。でも「何をどう変えればいいか」が分からなければ、変えようがない。
属人的な主観や、曖昧な分類ではなく、定量的な比較によって、自分の顔を客観的に知ることができたなら——そこからはじめて、「どう整えるか」という意思決定が生まれる。感覚の話ではなく、データの話として顔を語ることができたなら、誰もが自分の印象を自分でコントロールできるようになる。そのためのツールが、当時まだ存在していなかった。美容サイトは「あなたは〇〇顔型です」という分類を出すだけで、それが他と比べてどうなのか、どこをどう変えればいいのかまでは教えてくれない。AIを使った顔診断ツールも増えてきたが、出力されるのは「かわいい系」「クール系」といった印象の言葉だけで、数値ではなかった。
私が作りたかったのは、顔のパーツのバランスを定量的に示し、理想との差分を可視化するツールだった。就職活動をしている学生の皆さんが、面接前に自分の顔を客観的に把握できるように。第一印象が問われる場に立つすべての人が、「なんとなく」ではなく根拠を持って自分を整えられるように。
2025年、Bicochuを立ち上げた
美容コスメ中央研究所——Bicochuという名前には、「研究する」という姿勢を込めた。感覚ではなく、データで美を語る場所にしたかった。
プログラミングはゼロからのスタートだった。育児の隙間に学び、娘たちが寝たあとにコードを書いた。うまくいかないことの方が多かったけれど、「なぜこれを作っているか」だけは、一度もぶれなかった。
就活、転職、結婚、復職——他者からの評価が避けられない場面に立つとき、自分の顔について「運がよかった」以外の言葉で語れる人を増やしたい。顔に関する評価を、運や感覚ではなく、選択可能な意思決定に変える支援を届けたい。
それが、Bicochuを作った理由です。
Bicochuについて
Bicochuは、AIを用いてあなたの顔を分析し、あなたが理想とするイメージに対してどのように近づいていけるか道筋を提案するサービスです。分類でも、印象でもない。“比較できる顔”という新しい基準。
・「表情」「カラー」「テクスチャ」で分けて分析
・常に同じ基準で比較
・どこを変えればいいか根拠として理解
