就職活動をしていたころ、「第一印象が9割」という言葉をよく耳にした。当時は気にしていなかったけれど、大手企業に入社し、インターナショナルな接客の現場に立つようになってから、その言葉の重みを実感するようになった。
空港のラウンジ、ホテルのフロント、VIPゲストとの対話——そういった場所では、見た目の印象が、言葉よりも先に相手に届く。それは否定すべきことではなく、接客のプロとして向き合うべき現実だった。
「なんとなく」で語られる顔
接客研修では、姿勢・表情・声のトーン・服装——第一印象を構成する要素はひとつひとつ言語化され、改善方法まで教わった。姿勢を正せば凛とした印象になる、口角を上げれば親しみやすく見える。すべてに理由があり、すべてに再現性があった。
ところが、その中で唯一「顔立ちそのもの」だけは、なぜかいつも感覚の話にとどまっていた。
メイクを変えると「今日いい感じだね」と言われる。髪型を変えると「雰囲気変わったね」と言われる。でも、何がどう変わったのかを具体的に言語化できる人はほとんどいなかった。感覚で語られ、感覚で評価される。そのことが、ずっともどかしかった。顔の印象は、姿勢や声と同じように「技術」として扱えるはずなのに、なぜか「生まれつき」「運」という言葉で片付けられてしまう。その違和感は、現場に立てば立つほど大きくなっていった。
育休という、立ち止まる時間
長女が生まれたとき、私はビジネスの現場から離れた。慌ただしかった毎日が、急に静かになった。育児は想像以上に体力を使うものだったけれど、それと同時に、ゆっくり考える時間が生まれた。
次女が生まれてからの数年間、私は二人の娘を育てながら、自分が何をしたいのかをずっと考えていた。現場に戻りたいという気持ちはあった。でも同時に、あの「もどかしさ」を何かの形にしたいという気持ちも、消えずにあった。
娘たちが少しずつ大きくなるにつれて、私はその思いを言葉にできるようになってきた。就活、職場、結婚、育児——人は人生のさまざまな場面で、見た目に関する他者からの評価に晒される。そのたびに「印象がいい」「なんとなく感じがいい」という曖昧な言葉で片付けられてきた何かを、もっと明確にしたいと思った。
「運」を、意思決定に変えたい
顔の印象は、変えられる。これは接客の現場で身をもって知ったことだ。でも「何をどう変えればいいか」が分からなければ、変えようがない。
属人的な主観や、曖昧な分類ではなく、定量的な比較によって、自分の顔を客観的に知ることができたなら——そこからはじめて、「どう整えるか」という意思決定が生まれる。感覚の話ではなく、データの話として顔を語ることができたなら、誰もが自分の印象を自分でコントロールできるようになる。そのためのツールが、当時まだ存在していなかった。美容サイトは「あなたは〇〇顔型です」という分類を出すだけで、それが他と比べてどうなのか、どこをどう変えればいいのかまでは教えてくれない。AIを使った顔診断ツールも増えてきたが、出力されるのは「かわいい系」「クール系」といった印象の言葉だけで、数値ではなかった。
私が作りたかったのは、顔のパーツのバランスを定量的に示し、理想との差分を可視化するツールだった。就職活動をしている学生の皆さんが、面接前に自分の顔を客観的に把握できるように。第一印象が問われる場に立つすべての人が、「なんとなく」ではなく根拠を持って自分を整えられるように。
2025年、Bicochuを立ち上げた
美容コスメ中央研究所——Bicochuという名前には、「研究する」という姿勢を込めた。感覚ではなく、データで美を語る場所にしたかった。
プログラミングはゼロからのスタートだった。育児の隙間に学び、娘たちが寝たあとにコードを書いた。うまくいかないことの方が多かったけれど、「なぜこれを作っているか」だけは、一度もぶれなかった。
就活、転職、結婚、復職——見た目の評価が避けられない場面に立つとき、自分の顔について「運がよかった」以外の言葉で語れる人を増やしたい。顔に関する評価を、運や感覚ではなく、選択可能な意思決定に変える支援を届けたい。
それが、Bicochuを作った理由です。
Bicochuについて
Bicochuは、AIを用いてあなたの顔を分析し、あなたが理想とするイメージに対してどのように近づいていけるか道筋を提案するサービスです。分類でも、印象でもない。“比較できる顔”という新しい基準。
・「表情」「カラー」「テクスチャ」で分けて分析
・常に同じ基準で比較
・どこを変えればいいか根拠として理解
